実例

組織開発実例
人材開発実例
経営開発実例

経営開発実例 ファシリテーションを活かした会議改革プロジェクト

●概要

職場内での議論の活性化や深化を狙い、会議の質を向上させることを目的とした「会議改革プロジェクト」が立ち上がった。ファシリテーションを活かしたプログラムの構築により、会議進行役となる係長/副課長クラスの人材(50名)を育成し、各職場での会議の改革を徐々に進めていった。

●課題

  • 職場の会議で議論が行われない
  • 会議の質を上げるための手法が分からない
  • 職場全体の取り組みとして会議改革をいかに浸透させるか

● 主な支援項目

  • 現状の調査(ワールドカフェ方式による対話型調査)
  • 実際の会議傍聴による問題点抽出
  • 若手リーダー候補の選出
  • ファシリテーションを活かしたプログラム構築
  • 会議進行役となる係長/副課長を対象とし研究実施
  • 現場への導入にあたって所属長の理解・協力を得るための研修実施

● プログラム構築のポイント

〜現場と向き合いスモールステップで変化を起こす〜

プロジェクトメンバーを対象とした最初の調査(「ワールド・カフェ」という対話の手法を用いて、メンバー内での率直な意見交換)により、会議改革プロジェクトそのものに対するコミットメントが低いこと、またメンバー全体のモチベーションも下がっていることが明らかとなったため、プログラム構築においては、以下の3つの点に留意した。

  1. 目的や役割の明確化
  2. ポイントを絞ることによるプログラムの軽量化
  3. すぐに活用でき持続できるツールの実用化

また、トップが求めている「会議の質を上げる」という、その「質」の対象を3つに仮定した。

  1. 時間の質の向上 …ロスタイムを圧縮する
  2. 中身の質の向上 …たくましい結論を得る
  3. 関係性の質の向上 …職員の関係を強化する

特に、3.関係性の質の向上を通じて、会議という場を組織内コミュニケーション再生の場として捉え直し、組織と個人の“元気”を回復することをめざすこととした。
上記のポイントをすべて共通に盛り込み、各職場で実際に会議を進行していく立場となる係長・副課長クラスを対象に研修を実施。また、研修後に実際の職場で実践してもらうためには、その所属長の理解と協力なしでは困難をきたすことが予想されたため、同時並行で所属長への研修も行った。
職場への具体的な導入にあたっては、最も自然に存在し抵抗感の少ない「ホワイトボード」に絞って着目し、板書のスキルを各階層や県庁内の全職場共通のインフラとして標準装備化していく最重点項目とした。ファシリテーションの機能の中で最大の強みである「可視化」の威力を存分に発揮させシンプルに伝えていくことには特に腐心した。また、職場の推進役である研修参加メンバーのみならず、その所属職場の所属長に対してもファシリテーターの役割を体感することを共通項目として実施した。
さらに加えて、お互いに会議の状況や自分自身の進行スタイルを観察しあってフィードバックし合う「振り返り」を重視するプログラムとしたことで場の相互作用の中で参加者同士が気づき、学び合うスタイルをとった。

プログラム実施による職場の変化

〜会議が変わると『人』と『組織』が変化する〜

所属長研修2回を皮切りに、係長/副課長クラスの50名を対象に4回の集合研修を実施、また、第1期、第2期と年度を挟んで実施することで、合計約100名の会議ファシリテーターの人材を育成した。
その結果、この研修が現場での実践に役立つ現実的なプログラムとして階層を問わず受け入れられ、職場における会議の形態や進め方が変わっていった。また、インフラとして狙ったホワイトボードの導入も進み、当初の調査では、その設置率は50%であったが、研修後には75%にまで跳ね上がった。現場での動きが具体化し始めた結果といえるだろう。
同時に、プロジェクトが長期に亘ったことも幸いして、プログラムに参加したメンバー同士のチーム・ビルディングにも寄与し、これまでは知らない者同士だった職員が研修をきっかけに分野や年次を問わず日常のコミュニケーションをとるようにもなっていった。
会議を改善することをきっかけにスタートしたプログラムは、単に会議のみの改善に留まらず、組織内のインフォーマルな結びつきを再構築し、ソーシャルキャピタルの強化と組織改革につながった、と言えよう。
何より、「会議改革」を発案したトップ自身がその変化を強く認識し、このプロジェクトの取り組み成果を内外で積極的に語っている。